アルファベットとフェイスブック株が爆騰している理由


昨日のマーケットにおいてアルファベット株は+9%、フェイスブック株に至ってはザラ場で+6%、決算を受けた時間外でも9%上昇している。両社はともに2020年度の第1Q決算において売上高が予想を上回ったが、それ事態は大した理由ではない。


1-3月期はコロナ問題による影響が限定的でそもそも関心は低く、マーケット最大の関心は「最大の落ち込みになると考えられる4-6月期」を含めた通年の業績だ。両社ともオフィシャルな見通しは公表していないが、いずれもCFOが重要なコメントをしておりそれが株価高騰の起爆剤となっている。



決算説明会において
・アルファベットのルース・ポラットCFOは、「広告収入は3月に急減したが、それ以降は収益の減少が見られない。」との発言。
・フェイスブックのデイビット・ヴェーナーCFOは4月3週目には収益が安定化しており、しかも売上規模は前年同期程度との発言。



これは想定外だ。アルファベットの第1Qは14%の増収であったが多くのアナリストは4-6月期に大きく落ち込み、通年では初めて減収になると予想していた。従業員の採用抑制やコストカットはそれに備えるものだと。またモルガン・スタンレーは、フェイスブックの顧客の30〜40%は資金力の脆弱な中小企業であり、4-6月期には広告収入が50%以上落ち込むという過激な予想を披露していた。だからこそフェイスブックは顧客向けに1億ドルの支援を行うとも。



しかし両CFOの発言通りに事が進むならば、確かに株価が爆騰してもおかしくない。それほど悪くなりそうにないという事実は、少なくとも決算前までは想定外だったからだ。1-3月期においてアルファベット傘下のYoutubeは前年同期比+33%、クラウドは+52%、Chromebookなどのハード・その他は+23%と順調であるが、第2Qは本業の広告が全てを吹き飛ばし、下手したら2桁減とも予想されていた。フェイスブックのDAU(1日あたりユーザー)は市場予想17億人を上回る17.3億人、MAU(1ヶ月)が26億人と前年から+10%も拡大していることはサプライズであったが、広告単価の下落が全てを帳消しにすると考えられていた。



今のところアルファベットの第2Qの売上高コンセンサスはなんと、前年同期比-2.7%であり決算前の-3.1%からさらに改善されている。しかしWSJは広告収入の約4割が旅行やレストラン、自動車や小売店などコロナ問題による影響が大きいところとの指摘しているが、私も見通しに関してはかなり甘いような気がしてならず、業績下振れリスクを想定している。



ただ両CFOの発言はあくまで現時点でのものであり、かつ第2Q決算が極めて厳しいものになることについては否定していない。真意は今後確認する他ないのだが、両社がいずれも4-6月期の見通しを示さなかったことは正解だろうと思う。不確かな情報で投資家を混乱させる必要はない。



それに株式投資において大切なことは目先がどうこうではなく長期的な見通しであり、その意味で今回私が取り上げた内容も所詮は詮無きことである。サンダー・ピチャイCEOはこの切迫した時期は、人々がよりグーグルのサービスに依存するだろうと言うが、確かに今考察すべきはこの危機にデジタル化の波にのってサービスを拡充させる企業だろう。マイクロソフトのサティア・ナデラCEOが本日の決算発表において「2年分のトランス・フォーメーションがたった2ヶ月で起こった。」と語ったが、強烈なリーダーシップで同社の業績を牽引している。グーグルは企業向けクラウドやGSuit、ビデオ会議システムなどいずれもマイクロソフトの後塵を拝しそうな気配であり、圧倒的な力を持つ広告事業以外の競争力こそが、今見るべきポイントなのかもしれない。