原油ETFに妙味はない。

原油価格のマイナスは大混乱を生んでいる。

今週、原油価格は市場初めてマイナスとなり多くの投資家が大損したが、中国では元手がゼロになるだけでは済まされず追加の支払いまで求められる例があるようだ。中国銀行が個人向けに販売しているWTI連動商品「原油宝」は原油価格がマイナスに突入した21日に1バレル-37.63ドルで精算され、不足する金額を投資家に請求した。



そもそも複雑なデリバティブ契約が一般向けに、それもネットで気軽に買えてしまうとはさすが中国。中国工商銀行や中国建設銀行も同様の商品を提供していただが、ロールオーバーのタイミングがわずかに早かったため最悪の事態は回避できた。中国銀行のタイミングはまさに考えうる中で最悪であり、後に問題になる可能性がある。特に通常1週間から10日前に行われるロールオーバーのタイミングが最終取引直前であったことや、投資額以上に損失を生む可能性についてリスクを開示していたがどうかだ。



これは対岸の火事ではなく日本や米国でも商品性をよく分からずに、単に原油が安いからという理由でETFに投資するのは危険だろう。少なくとも原油が値上がったとしても、キャピタルゲインを享受できるとは限らないことは理解すべきだ。


これは原油ETFがロールオーバーを繰り返す商品性であることから、期近と期先の価格差を考える必要がある。期先の価格が高い、いわゆるロールオーバーが不利な条件であることをコンタンゴがというがその場合は現在価値を割引く必要がある。



特に在庫が溢れ保管コストが高まっている現状においては、現物価格に近い期近ものは価格下落の圧力にさらされており過度なコンタンゴ状態を生んでいる。原油ETFはロールオーバーやコンタンゴによる割引を考えれば明らかに長期戦は不利で、そもそも信託報酬も高くて金融商品としての価値は低い。



また途中償還のリスクもあり、現状を踏まえるとETFやETNの運用が急遽停止される可能性は高い。中国で問題となった原油連動商品は既に停止しており、 バークレイズも代表的な原油ETN「iPath  SeriesB S&P GSCI Crude Oil」を4月30日に償還させるとのことだ。



いずれにせよ投資においてコストが高い取引は論外で、さらに先物市場というのはゼロサムゲームであり大半の素人は負ける。何故なら先物では、株式指数だろうが商品だろうが必ず裁定機会が存在するため、ギャンブルにおける胴元のように投資資金を掠め取られていく。競馬やパチンコなどと同じように期待値は1を下回り、長期では負ける確率が高い。原油市場は一発逆転の目が残されているように見えるかもしれないが、思っている以上に妙味は少なくしかも非常にリスキーだ。