マーケット見通し


企業業績の悪化はまだ完全に織り込んでいない。

過去のあらゆる危機を振り返れば、市場の暴落は投資家が一斉に流動性を求め、出口に殺到することから始まる。これが危機の第一波であり、今回のように中央銀行の流動性供給によって落ち着きを取り戻すことができる。いつの時代も分不相応なレバレッジをかけている企業が破綻し、危機が拡大してから対応することが多いのだが今回の動きは早い。



しかしまだ見えていない問題がある。それは企業業績がどの程度悪化するのかという見通しと新型コロナウイルス問題が収束する時期だ。今のところ流動性を提供することで問題の第一波は収まりつつあるが、企業業績の悪化はまだ完全に織り込んでおらずコロナ問題が長期化するようであれば二番底は十分にあり得る。




株価の正当性を示すには利益見通しが不可欠であるのだが、今のところ肝心の企業ですら把握できていない状況だろう。調査会社ファクトセットによるS&P500の予想EPSは足元156ドルであり、2月の予想184ドルから15%下方修正した。これはつまり2019年のEPS164.59から5%の悪化で済むとのシナリオであるが、さすがに楽観的過ぎるかと。ウォール街では140ドル前後の予想が主流となりつつあるが、仮に2020年のEPSが156ドルだとすれば現在の予想PERは18倍弱となる計算だがそれはないだろう。



米国のアナリスト予想では2020年の第2Qが最悪で、第3Qにはだいぶ持ち直し、第4Qに大幅回復という見通しが結構出ているが、その通りにいくかは不明だ。


前回金融危機時のS&P500のEPS

2007年85.12(サブプライム問題)
2008年65.47(リーマンショック)
2009年60.80(3/2にS&P500は最安値)
2010年85.28
2011年97.82
2012年103.80


ゴールドマン・サックスによると過去の金融危機におけるピークから底値までの期間は平均で17ヶ月ということだ。前回の金融危機時のS&P500の最安値は2009年3月であり、高値をつけた2007年10月から1年5ヶ月後、リーマン破綻から5ヶ月後になる。S&P500のEPSは株価が底をつけた2009年が最低であり、2010年以降は順調に回復していった。




前回の2008年金融危機時にFRB議長であったバーナンキ氏は先週、第2四半期の米GDPはマイナス30%以上になると予想した。金融機関の健全性を理由に前回よりも回復は早いと予想するが、それでも長期戦を覚悟するよう警告している。問題が長引けば仮にコロナ問題を凌いだとしても国家や企業の債務は膨れ上がり、その後の金融危機につながる可能性がある。ただ我々投資家は戒めとして覚えておくべきは「FRBと戦うべきではない。」ということだ。確かに時間はかかるかもしれないが、これ程の異例の緩和を続けていれば収束に向かう頃に株式市場が最高値を更新している可能性がある。それを考えればイタズラに売却を急ぐのも考えものであり、特にバランスシートが強固で、コロナ問題の影響が少ない企業の株はわざわざ売る必要はないかと考える。



米国では4月末までに2,000万人が一時解雇されると予想されている。3月の雇用統計はまだまだ問題が本格化する前の数字であり、5月に発表される「4月雇用統計」は深刻な状況を映すだろう。今後もコロナ問題による恐怖を感じる場面は多々あるだろうが、株式市場をはじめ物事がV字回復する見込みはなく、辛抱強く向き合っていかなければならない。