長期戦を見据えて

S&P500は最高値をつけた2/19から3/23までの間に34%下落したが、既に半値戻しは達成している。コロナ問題は投資家を大混乱に陥れ、未だ収束する見込みはないのだが米国株は予想外のスピードで回復し、先週の終値は最高値からわずかに15%低いだけだ。



冷静な投資家であれば一旦戻した場面で売るかどうか迷うだろう。この第2四半期は世界中でGDPが壊滅的に落ち込むだろうし、JPモルガンのエコノミストは米GDPは年率換算で-40%になると予想している。またリーマンショックやITをバブル崩壊のような大規模な下落局面、2010年〜2011年にかけて起こった欧州債務危機など例を見ても、安値からダイレクトにV字回復した例は少ない。いずれも2番底をつけている上に回復までにそれなりの時間を要している。リーマン時は最高値から最安値まで1年5ヶ月、ITをバブル時は2年と7ヶ月かかった。



それでも長く保有できる人ならば安易にマーケットから離脱することはおすすめしない。投資において最大のリスクは上昇局面でノーポジになっていることだからだ。現在各国の中央銀行による大規模な緩和は異例の水準に達しており、コロナ問題が収束する頃には最高値を更新している可能性がある。



主要国の経済対策の規模は8兆ドルを超える見通しであり、リーマンショック時の2倍以上だ。FRBは無制限の緩和を発表しており、バランスシートは既に3月から4月15日までの間に4.3兆ドルから6.4兆ドルと1.5倍に拡大した。年内には9兆ドルを超えると見られているが、世界中で前例のない規模の緩和政策が実行されている。


https://www.visualcapitalist.com/the-feds-balance-sheet-the-other-exponential-curve/


緩和に加え、回復のスピードを加速させているのはショートカバーである。


WSJによると米株式市場における空売り残高は2016年1月以来の高水準にあると言うが、空売り対象として圧倒的人気を誇るテスラの株を見れば一目瞭然だ。直近の安値をつけた3/18からわずか1ヶ月で株価は2倍以上、年初来でも+80%の水準だ。いわゆる踏み上げ状態だ。その他にも現在空売りのターゲットとなっているのはクルーズ船のカーニバル、ロイヤル・カリビアン・クルーズ、ホテルチェーンのマリオットなどだが、いずれも先週末に大幅高している。



これらの一時的な需給による回復はいつまでも続かない。さらにいくら財政出動や流動性を提供しても経済活動を再開できなければ根本的な解決にはつながらない。やはり経済活動の再開時期が最大の焦点だ。まもなく米国の2020年第1Q決算が本格化するが、これはほとんど意味のないものになるだろう。大半の企業はまだコロナ問題による影響が限定的な時期であり、かつ見通しもほとんど出すことができない可能性が高い。