Pinterestへの投資に妙味あり

Instagramに次ぐ強力なプラットフォーム

Pinterestは画像・動画共有のプラットフォーム企業。ユーザーは無数にある画像の中からお気に入りをピン(ストック)し、他人と共有することができる。最近は動画やVR機能も拡張されている。

PinterestPinterestのサイトより

FacebookやInstagram、TikTokとの違いは他人との共有をメインに置いておらず、自分の好きなものを収集するという利己的な側面が強いことだ。創業者でCEOのベン・シルバーマン氏は、画像のクリッピングのアイデアについて幼いころの趣味であった昆虫の標本作りを参考にしたと語る。

そのユニークな発想もさることながら2017年に「検索の未来はキーワードではなく、画像にある。」と語ったがこれは確実に正解だった。ユーザーはSNSやオンラインショッピングなどで、ますます視覚的な体験を好むようになっている。そのため人々は直感的でインスピレーションを生かせるツールを重視しておりこれがPinterestに強力なマネタイズの機会をもたらそうとしている。


Pinterestはプラットフォーム内の広告を通してユーザーをショッピングサイトへ結びつけることで収益を得る。2020/6末時点の月間アクティブユーザー数(MAUs)は4.2億人にのぼり、Facebookの27億人から見ると規模はまだまだ劣るが第2Qに39%増加した。最近はInstagram同様にショッピング機能を強化し、またECプラットフォームShopifyとの提携により出店企業は増え続けており、マネタイズの本格化はこれからだ。


ユーザー1人あたりの収益(ARPU)はわずか0.7ドルとFacebookの10分の1しかないがそれだけ拡大の余地があるとも言える。しかもユーザーの7割が女性で、年齢層が高く、かつ購買意欲が高いターゲット層を抱えていることは最大の武器であり、企業の広告戦略においてFacebook、Instagram、Twitterに代わる新たなツールとして検討されるのは当然の流れだろう。


アナリスト評価は割れる

8月末時点で同社をカバーするアナリストは25社あるが、Buy以上は9社、中間のHoldが15社、Underが1社だ。目標株価の平均は37.52ドル。

・8/10Morgan Stanleyはオーバーウェイトに設定し、目標株価を従来の33ドルから44ドルに引き上げ。

・8/24Citygroupは同社への成長期待は高すぎるとして、買いから中立へ格下げ。目標株価は35ドル


アナリストによる市場予想

第3Q、第4Qの売上高

・2020年7-9月期3.75億ドル(前年比+34.1%)

・2020年10-12月期5.2億ドル(前年比+30.10%)

第3Q、第4Qともに30%台前半の成長予想だが、これはかなり過小評価している可能性がある。既に公表されている7月の売上高は前年比+50%と驚異的な伸びを示しており、私は少なくとも3Q(7-9月期)が30%台前半になる可能性は低いと考えている。会社側はさらに保守的な予想を出しているが。


通期の売上高予想

・2020年は14.4億ドル(前年比+26.3%)

・2021年は19.3 億ドル(前年比+33.6 %)

私の予想では今期の通期成長率は+30%の14.8億ドル、来期は+40%成長の20.7億ドル程度を想定している。そして2024年には売上高で50億ドルを超える可能性は十分あると考えている。


・市場が予想する30%成長モデルはFacebookの辿ってきた軌跡を想定するとかなり低い。

・Pinterestのユーザーは他のどのプラットフォームよりもユーザーの年収、購入意欲が高く、つまり質がいい。

・InstagramとPinterestはECのマーケティングツールとして価値が高く、Eコマース拡大の恩恵を受ける。


Facebookの軌跡

Facebook_RevenueFacebook売上高推移 statistaより引用

現在のPinterestはFacebookの2009〜2010年当時の売上高と同じぐらいだが、Facebookは2010年以降の5年間で売上高は9倍、年率平均56%で成長した。

Facebookの今期売上高は800億ドルになる見込みで、時価総額はその10倍の8,000億ドルだ。一方でPinterestの売上高は14.4億ドルとFacebookの55分の1であり、時価総額は230億ドルだ。しかしもし仮に年間売上高が50億ドルを超えてくるようだと、時価総額で500億ドル、現在の2.5倍の価値を生み出す可能性がある。


ユーザー1人あたり収益

・PinterestのARPUは0.7ドルとFacebookの7.05ドルの約10分の1。

・米国市場のARPUでみるとPinterestが2.5ドル、Facebookは(米国・カナダ)39.49ドルとさらに差は大きい。


FacebookのHobbiは撤退

FacebookがPinterestを模範にしたHobbiはわずか半年でサービス終了。同アプリは2020年2月にiOS向けにリリースされ、一時は最大の脅威と思われたが米SensorTowerによるとダウンロード数はわずかに7,000程度にとどまったとの事だ。これは朗報であるとともに、Pinterestのビジネスが認知されている証拠でもある。Pinterestのユーザーは第2Qに+39%増加した。


個人情報規制の懸念は少ない。

ターゲット広告はユーザーのアプリやウェブ履歴から最適な広告情報を入手する。しかしこの慣習についてはプライバシーを侵害しているとの意見も多く、アップルのように広告ID(IDFA)を制限する企業も生まれているし、欧州ではさらに厳しい規制が予定されている。

ただ仮にデータ規制が厳しくなってもPinterestへの影響は軽微だろう。何故なら他サイトのアクティビティを利用しなくとも、ユーザー自ら関心のあるテーマを検索してくれるからだ。Googleの検索エンジンのようにキーワードに応じて広告を出せばよく、データ規制のリスクは低い。

まとめ

PinterestはInstagram同様に新たな商品の発見をもたらし、また購入を決定する最終確認の場として重要な役割をもつようになっている。私はD2C「Direct to Consumer」市場の発展において、さらに不可欠な存在になると予想している。

現在の時価総額は今期の予想売上高の14倍程度、2021年予想では10倍とかなり妥当だ。他の成長株と比較しても著しく過小評価されているように思える。

・Shopifyの時価総額は今期の予想売上高の45倍、来期予想で34倍。

・ZoomVideoの時価総額は今期予想売上高の47倍、来期予想で36倍。

第2Q決算を受けて以前よりも株価は上がっているが、引き続き30%以上の成長率が期待できることやバリュエーションの低さから現在の下落局面ではぜひとも検討したい1社だと思っている。


ピンタレストは過小評価されている