ITグロースの急落を分析。バリュエーション問題とアフターコロナへの警戒

問題の本質はバリュエーションの調整

本日は今決算シーズンの状況を考察するとともに、軟調なIT株の今後について考えたいと思う。

まず今決算の傾向として、グロースに対して市場の厳しい目があるということだろう。金曜日に15%急落したTwitterに見られる下落率の大きさに加え、市場予想を大きく上回る決算を出したアップル、アマゾン株がその後のマーケットでマイナスに沈んでいることからも明らかだ。アップルに至ってはEPSが40%も上振れし、かつ自社株買い900億ドルに7%の増配と文句無しのサプライズ内容だったのだが。バーンスタインのアナリストは、株価が下がった理由について聞かれ「数字が良すぎて2022年に向けてハードルが上がった。」と?な回答をしているが、無理に決算のあら探しをしても本質的な問題には辿り着けない。

アルファベットに関してもサンダー・ピチャイCEOのもと、市場が期待した通りに情報開示と大幅な株主還元を進めている。500億ドルの自社株買いはちょっとしたビッグニュースだと思うが、株価の反応は想像よりもはるかに小さかった。

また当ブログで注目しているピンタレスト(PINS)、PTC(PTC)、サービスナウ(NOW)は、1Q決算発表後に無残にも売り込まれてしまった。一部コンセンサスが下回ったり、アフターコロナへの警戒コメントがあったにせよ、3社ともに決算はかなり良好であり、10%以上の下げは意外だった。特に年始に一桁成長と予想されていたPTCの成長率は足元+28%(買収を含むが)まで加速しておりポジティブサプライズだった。マーケットでの下げ方を見て、正直なところ第二のアルケゴスでも破綻したのかと思ったほどだ。

ただしDXグロース株はどれも割高であることは事実なので、決算を切り離し、バリュエーションの問題と考えればすんなり理解できる。アップルもマイクロソフトもかつてはPER10倍台だったが、今時のグロースはPER30倍は割安で、PSR30倍が許容される時代だ。世が世なら2、3割下げても文句は言えない企業は多く、そこにピンタレスト急落の原因ともなったアフターコロナへの警戒感が重なり、株価の重しとなっている。


この流れは、IT関連で真っ先に決算を出したネットフリックスの影響を汲んでいるものと推測できる。同社の新規ユーザー数の落ち込みは、アフターコロナの怖さを最も分かりやすく現しているからだ。会社側は制作の遅れとともに、明らか需要を前倒しした影響と説明している。


マイクロソフトのサティア・ナデラCEOが「2年分のデジタル変革がわずか2ヶ月で訪れた。」とコメントしてからはや1年。DX企業の中には、3〜5年かけて期待していた水準へ既に辿り着いてしまった例がある。コロナ下の代替ビジネスで終わる企業はあっさり見切ればいいのだが、引き続き余地がありそうな企業への判断は難しい。

例えばこれから3年で得られるだろう売上高や利益と、現在の時価総額を比べた時に果たしてどれぐらい余地が残されているだろうか。5年以上の成長が前提でないと成り立たない投資アイデアであれば、相当な覚悟が必要となる。またバリュエーション判断をどこまで許容すべきかも難しい問題だ。

成長率についてはいくらでも占うことはできるが、それが正しいかどうかが分かるのはまだまだ先だ。アフターコロナで2、3回と決算を積み重ねる過程で明らかになるだろうが、その間は高バリュエーションという爆弾を抱えながら耐え抜いていかなければいけない。それ故にアフターコロナを見据えたこの段階で、シビな展開や目に見えない不穏な動きにさらされる理由となっている。

DX企業の決算ラッシュ

6月までの1ヶ月間は、昨年急騰したDXグロースの決算ラッシュで、クライマックスは6/1のズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(ZM)になりそうだ。既に述べた通りDX企業のバリュエーションと先行きに対する警戒感は最高潮に高まりつつあり、決算前にポジションを縮小する動きが加速するかもしれない。また好決算でも下落する可能性が考えられるため、投資家にとってはまさに正念場となる。当ブログでは特に5/5 のペイパル(PYPL)、ハブスポット(HUBS)、5/26のオートデスク(ADSK)に注目している。


5〜6月決算スケジュール

5/4  アクテビジョンブリザード、リングセントラル、ペイコムソフトウェア、リフト

5/5  ペイパル、ブッキングホールディングス、ウーバー、トゥイリオ、アンシス、ハブスポット

5/6  スクエア、ロク、ペロトン、EPAM

5/10 ロブロックス、トレード・デスク、アファーム

5/11 パランティア、エレクトリック・アーツ、ユニティ

5/13 ウォルト・ディズニー、アプライド・マテリアルズ、コインベース、ドアダッシュ

5/18 ウォルマート

5/19 シスコ・システムズ

5/20 インテュイット、パロルトネットワークス、スプランク

5/26 エヌビディア、オートデスク、ワークデイ

5/27 セールスフォース・ドットコム、エアビーアンドビー、Veevaシステムズ、オクタ、Zスケーラー

6/1  ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ、クラウドストライク

6/2  スノーフレイク

6/3  ブロードコム、ドキュサイン、スラック

6/10 アドビ

※日付は現地でソースはNASDAQ。ハイテク中心に筆者が抜粋。またいずれも4/30時点のデータであり、変更の可能性あり。


話題は変わるが、プロ投資家の今年のお薦めはダントツで金融であり、2位がIT、次いでエネルギーセクターだ。ITは人気の一方で最も悪いパフォーマンスになるとの予想も多く、総じてバリュー株がグロースを上回るとの予想だ。ただ長期ではグロース優位との考え方は依然多い。どの戦略を取るべきかは結局、時間軸をどう設定するかによる。バリューへ切り替えが短期的に上手く行ったとしても長期のパフォーマンスは分からないし、タイミングよく切り替えていくことはさらに難しい選択となる。

私自身もやはり長期的にはグロース優位と考えているがその場合、バリュエーションの問題と付き合っていく覚悟が必要だということだ。マーケットが急落した場合、恐らく目も当てられない状況に陥るだろうが、長期的なリターンで帳尻を合わせていくしかない。


参考事例

長期投資の実践はやはり信念と長期展望だろうと思わせてくれる事例がある。先週のバロンズにおいて、エバーコアISIのアナリストのマーク・マハニー氏はネットフリックスの加入者数が現在の2億人から最終的には5〜10億人なると予想しているとのことだ。

実現性は別として、その大局観はあらゆる迷いを排除するものだ。確かにそうなれば投資家の目下の問題は全て解決するし、難しい戦略は不要となる。目先のコンセンサスばかりを見ている我々の投資スタンスではどうしても視野が狭まる。

また著名投資家ビル・ミラー氏は、アマゾン株が3年で2倍になると言う。根拠としては2〜3年のうちに広告事業が5,000億ドル、AWSが1兆ドルの価値を持つようになり、仮に独占禁止法によって解体されても価値はさらに増すから気にしなくていいとのアドバイスだ。全財産の2〜3割を突っ込むべきとの話はまさに自信に満ち溢れている。

まとめ

今決算の下落要因は、決算内容そのものよりもバリュエーションとアフターコロナへの警戒感が要因との分析が妥当だろう。DX企業がコロナ下の代替で終わるのか、需要を先食いしてペースが鈍化するのか、それとも高い成長を継続するのか。それを見極めるステージが訪れているということだ。投資先企業の成長に確信がなく、ブームに乗った投資を継続してきたのならば見切るもの手だ。今月のDX決算シーズンは試練を伴うものになるだろうし、保有し続けるとしても相当な忍耐を求められることになるからだ。正しい判断と、それを乗り越えられる忍耐を兼ね備えた投資家だけがこの苦難を乗り越えられるだろう。ただし過信は禁物で、ある程度分散したポートフォリオで保有していくことが望ましいだろう。