テスラCEOイーロン・マスクの巨額報酬は桁外れの規模

テスラの時価総額はホーム・デポ、インテル、ネットフリックスなどを抜き今や全米第14位。イーロン・マスク氏の個人資産はウォーレン・バフェット氏を超えた。


テスラの株価は過去1年間で約6倍、つまりは500%近くも上昇しているのだが、7月に入ってからそのスピードはさらに加速している。昨日までの10日間だけで48%上昇し、時価総額は今や2,777億ドルにものぼる。それが妥当であるかは別としてイーロン・マスクCEOは業績連動による巨額報酬を受け取る見込みだ。


2018年に設定された巨額報酬パッケージは12分割されており、業績に応じてマスクCEOが受け取る権利が定められている。全てを達成した暁にはおおよそ560億ドルを受け取れる仕組みだが、既に今年の5月に第一弾を達成して7.5億ドルの報酬を受け取っている。第二弾の条件に成功すれば報酬はストックオプション169万株(1株あたり350ドルで取得できる権利)を持つこととなり、現在の価値で17億ドルに跳ね上がる。その条件とは過去6ヶ月および30日のいずれにおいても時価総額1,500億ドル以上を維持することだ。



テスラの過去6ヶ月の時価総額平均は既に1,400億ドル程度で、現在の水準を考慮すればもはや時間の問題だ。ご機嫌なマスクCEOは、またもや同社をターゲットとした空売り投資家を煽るための工夫を凝らす。テスラの自社サイトで真っ赤なショート・ショーツを本当に販売し、Sold outの文字を躍らせる。


言うまでも空売り投資家へのあてつけだ。

テスラの決算は7月22日。S&P500への組み入れの可能性が期待されている。

既に4-6月期に販売台数が好調だったことはわかっているが、今回の決算はテスラにとっても投資家にとっても別の意味がある。それはもし仮に今回の決算が黒字であった場合、四半期ベースの黒字は4連続となりS&P500指数への組み入れが現実的になるのだ。そうなった場合、Virtu Financialの試算ではパッシブだけでも300億ドルの買い需要を生み、同社株を空売りする投資家はさらに震えがあることになる。S3パートナーズによるとテスラ株の空売り残高は先週時点で190億ドル規模にのぼるとのことであり、さらなる祭りに発展する可能性はある。

バリエーションは異常な水準

私は個人的にテスラとイーロン・マスク氏のファンであり、その動向はエンターテインメントとして楽しませてもらっている。ただやはり今の時価総額は完全に行き過ぎている感が強い。かといって現在の緩和相場で空売りする投資家は本当に愚かだと思うが。


昨日の終値を元に計算すると、今期の予想PERは338倍、2021年度では130倍となり、時価総額は今年の予想売上高の10倍、2021年度の7.4倍だ。テスラのPSR(Price to Sales Ratio)は通常の自動車メーカーのPER(Price Earnings Ratio)と等しいのだが、私はそれが妥当とは思わない。トヨタの時価総額は売上高の1倍を下回るが、同社の稼ぐ力は自動車業界の中では屈指の存在だ。



そのトヨタ自動車の前期の売上高は約30兆円とテスラの10倍以上あるが時価総額は700億ドル以上の差をつけられている。GMやフォード、クライスラーに至っては3社が集まっても全くもって歯が立たない。大半の自動車会社はコロナウイルスの影響もあって株価は軒並み下落している。そんな中一人勝ちするテスラは確かに自動車会社としては大変に優れた会社だが、その価値は異常な緩和相場が創り出した幻想である可能性がある。