VMwareがDell Technologiesからのスピンオフ観測で急騰

ウォール・ストリート・ジャーナルによるとDell Technologiesは発行済株式の80.6%、議決権ベースで97.4%を握る子会社VMウェア株を売却する用意があるとのことだ。時価にして約500億ドル、Dellの中核をなす企業だが、本日の米国市場では報道を受けてDell Technologies+10%、VMware+5%程度でスタートしている。

まだまだ初期構想

株価はいずれも急騰してスタートしており、市場は分離がハッピーエンドと判断しているように思える。しかし構想はまだまだ初期段階であり報道によると逆にDellがVMウェアの残り全てを取得する選択肢すらあるという驚くべき曖昧な内容だ。しかし後者の選択肢、つまりデルがVM株の残りを全て買う選択肢はほとんどありえないだろう。今回の事案はそもそも再上場以降、全く株価が冴えないDell Technologiesの株価対策の意味合いが強く、400億ドルを超える負債軽減が目的だからだ。つまりデルがバランスシート改善のため虎の子であるVMウェア株を放出する可能性は高いのだが、それにおいても税制の問題から最短でも成立は2021年9月以降になる見込み。




「オンプレミスからクラウドへの転換」は、当ブログで最も注目しているテーマの一つであり、今後も大きな利益をもたらす分野と確信している。一方でオンプレミス側のイノベーションを牽引する技術は「仮想化」でありVMウェアの技術だ。仮想化とは簡単に言えばハードウェアの性能を高めコスト削減や効率化を図る技術であるが、その分野においてVMウェアはリーディングカンパニーである。また 「VMware Cloud on AWS」に代表されるようにオンプレミスで構築したシステムをそのままクラウド上へ移行できるサービスが成長を牽引している。主流としてクラウド化への流れは止られないだろうが、まだまだオンプレミスとクラウド双方の運営が求められる中で同社の技術は大変重宝されている。



VMウェアは長らくハードウェアベースのストレージ企業であるEMCの子会社であり、2016年には親会社に老舗PC企業のDELLが加わった。仮想化はハードウェアの性能向上がコンセプトであったこともあり、下火の大手ハード企業の傘下に収まってしまった経緯はよく分かるがこれがディスカウントを生んでいる可能は高い。


さらに個人的には昨年27億ドルで買収したピボタルソフトウェアの案件はかなりケチをつけた思う。2018年の4月に上場したばかりのソフトウェア開発者支援のピボタルソフトウェアはもともとVMWからのスピンオフによって誕生したのだが、上場して2年も立たないうちに再びVMウェアに買い戻された経緯がある。株価が大幅に上がっていればまだしも、ひどい下落のあとの買い戻しは同社のガバナンスに対するイメージを大幅に損ねたと思う。長期投資を想定した投資家にとってはまさに悲劇。



将来性は引き続き高い。

今後もVMウェアのビジネス領域はますます拡大し、例えばオンプレミスとパブリッククラウドサービスを企業が組み合わせるハイブリッドクラウド、ソフトウェアベースのデータセンター、買収したカーボン・ブラックをベースにしたセキュリティツールなど順調に拡大するだろう。AWSとの強固な関係は有名だが、マイクロソフトのAzureとの提携も拡大しクラウドビジネスにおいても存在感は大きい。


バリエーション

・2021年度の予想EPSは6.11ドルで、昨日の終値148ドルから換算すると予想PERは24倍
・2021年度の売上高成長率(予想)は、コロナ問題前の+11.5%の120.5億ドルから足元は+6.7%の115.3億ドルへ下振れ


総合的な評価は引き続き成長が期待できる期待企業の1つであるが、積極的な投資案件とまでは評価しづらいのが正直なところだ。