後払いサービス(BNPL)のアファームは注目の企業

 

消費者ローン市場におけるクレジットカードの役割は縮小していく可能性。


クレジットカードは主要な支払い手段としての地位を築いているが、特にオンラインでは新たなフィンテックサービスがシェアを奪う可能性がある。割を食うのはまたもや銀行だ。


スウェーデンのKlarna、オーストラリアのAftePay、米国のAffirm、そして昨年よりPayPalが参入しているBNPL(Buy Now Pay Later)のビジネスには大きな可能性がある。消費者はカードローンからBNPLサービスへ置き換えることで多額の金利を節約することができるからだ。消費者向けのローンビジネスは珍しいものではないが、トランザクションごとに消費者とマーチャント双方の管理を行う点で明らかにクレジットカードに近いビジネスモデルだ。

注目に値するアファーム(AFRM)のビジネス

消費者がローンを利用して商品を購入する際、マーチャント側が金利を負担するというモデルは既にある。日本で有名なところではジャパネットたかただろう。ローンを利用して自社製品を購入してもらえるならば、金利分をディスカウントしても構わないという販売手法だ。ただし自社でファイナンスサービスを手掛けられる企業は少数であり、そのためほとんどがクレジットカードの融資機能に頼り切っていた。


そこに現れたのが第三者としてマーチャントと消費者を仲介するのがBNPL業者である。単なる融資は、消費者へ課す金利に依存しているが、BNPLサービスはマーチャント側からの収益があるため、消費者の負担を軽くすることでユーザーを惹き付けるマネタイズができる。言うならば、消費者が支払うべきローン金利の一部を購入するマーチャント側へ負担させる仕組みだ。


銀行、アクワイアラ、ネットワークが莫大な収益を取るクレジットカードよりも手数料や金利を安く抑えることなど簡単なことだ。しかしいかに優れたサービスでも、カードが支配する社会で普及させること自体が難しかった。


これまでのクレジットカードを代替しようとする試みは、おおよそ小売店側の手数料メリットを説くものばかりであったため、あまり浸透していない。しかしBNPLはカードのローンを利用する消費者にとっては明らかにメリットがある。しかも面倒な手続きや審査も不要で、即利用できる上、返済に問題がなければ個人のクレジットにも影響を与えない。


リワードを期待するユーザーにBNPLサービスの恩恵はなく、完全にクレジットカードを代替する手段とはならないだろうが、ローンを必要とするユーザーを取り込む余地は大きい。しかも米国人のカードローン残高は1兆ドルという巨大なマーケットがあり、2019年には金利だけで1,200億ドルを支払っている。(affirmS-1より)


Affirmの金利はマーチャントごとに設定されており、また個人によって異なる。ただし支払いが遅れても延滞料はかからない。最大の顧客であるPelotonは金利を0%に設定しており、消費者の負担はない。また金利が発生するマーチャントのケースでもクレジットカードより安い金利で済むことが多い。


2020年度の収入の内訳を見ると、マーチャントから取る収益が50%、消費者が支払う金利が30%で構成されている。平均注文額は800ドルであり、平均的なローンの返済期間は10〜11ヶ月。

優秀なビジネスモデル

優れたビジネスモデルは常にマネタイズの仕組みが洗練されている。核心は誰にサービスを提供し、誰にその対価を支払わせるかにあるだろう。将来的にマーチャント収益によってビジネスが成り立てば、消費者の負担はさらに低減される可能性がある。


Affirmのサービスは販売コンバージョン率を20%以上引き上げ、平均注文額を80%増加させるとの報告があり、特にオンラインの支払いオプションとして導入が進んでいる。WalmartやShopifyとの提携、パンデミックによるeコマースの増加は、今後同社の業績を大きく押し上げていくはずだ。

2020年度の売上高は前年比+93%の5.1億ドルだったが、21年度の7-9月期の売上高は前年比+98%の1.7億ドルと成長は加速している。10-12月期の決算は明日の朝に発表されるが、かなりいい数字が出ることは間違いない。

リスク要因

フィットネスマシンのPelotonはAffirm最大の顧客であり、売上高の3割を占める。特定の顧客に依存したポートフォリオは明らかにリスクが高い。

またBNPLサービスにおいては与信判断が最も重要であることは明白である。ただaffirmが売りにしている独自のデータポイントの設定、AIを用いたアルゴリズムといった部分は、正直それ程優れたものには思えなかった。もちろんFICOデータしか利用しないカードローンよりかはいいかもしれないが。

今のところ、各社ともにデータアルゴリズムで優位に立てる技術はほとんどなく、これから一番情報を蓄積できるプラットフォームが勝っていくのではないだろうか。つまり先行者メリットが大きいという事だ。affirmによると64%がリピーターとのことで、特定のユーザーが大半を占めるビジネスであることもその傾向を強めるだろう。ただ後発でも3億人以上のアクティブユーザーを持つPayPalは大きな脅威だ。

最後に、同社は融資を行うCross RiverBankから債権を買い取るためバランスシートは膨らみ、貸し倒れリスクを取ることになる。決済に特化したプラットフォームビジネスではないためマージンは低下していく可能性が高いことは注意が必要だ。

ただBNPLサービスが爆発的に普及する過程では優秀な投資先となるだろう。パンデミック下で急速に進むデジタル化は同社の成長スピードを一層加速させる可能性が高い。


2/20一部記事内容修正