29日の米株式市場ではソフトウェア関連株が軒並み急落する場面があった。発端は金融情報専門紙バロンズが、「ソフトウェア会社の株価にはバブルの気配あり」として、バリエーションに対する警戒を呼びかけたことだ。当ブログでも注目しているAdobe、Twillio、Autodesk、intuitなども大きく売られているが、バロンズが指摘しなかったとしても過熱感は明らかで調整は避けられなかっただろう。また「超」がつくぐらいの割高な水準を正当化するためには、長期的な競争力を維持する必要があり、それができない企業は無残な結果に陥る可能性がある。前回の記事でも述べたが、いくら成長性の高いSaaSでも参入障壁や競争力の観点から選別して投資をするべきで、しかも今後ジェットコースターのようなマーケットを乗り切る忍耐が必要だ。
ソフトウェア企業の躍進
ファクトセットによるとS&P500の予想PERは17倍程度(7/26時点)と米市場全体のバリュエーションはわずかに割高な程度だ。しかも2019年4−6月期決算を発表した221社のうち170社の決算が事前予想を上回っており、好調な業績やFRBによる利下げを考慮すれば妥当な水準と言えるだろう。しかしクラウドソフトウェアは今年最もホットなセクターになっていることもあり、株価は平均で年初来40%近く上昇し、その大半が割高な水準だ。
2019年のIPO市場は近年ない程の活況ぶりで、資金調達額は2000年のドットコムバブルを超える可能性がある。その牽引役は好調なクラウドやソフトウェア企業のあまりに魅力的なリターンだ。
今年上場したZoom Video Communicationsの株価は3ヶ月で+168%のリターンを叩き出し、昨年のIPOトップパフォーマンスであるZscalerは1年3ヶ月で株価は4倍に上昇している。OKTAは上場から2年程度で株価は8倍となり、今週決算発表が予定されているShopifyの年初来のパフォーマンスは+140%と群を抜いている。ZoomとZscalerの売上高成長率は50%を超えており、OKTAやShopifyも30%を超えているが、その高い成長率こそが他のクラウドソフトウェア企業も含めて株価を正当化する唯一の理由でもある。
米中貿易摩擦が激化する中でも、製造や販売において中国への依存がないソフトウェア企業は投資がしやすかった。今後もクラウドへの移行を推し進める米企業の特需を最大限に受け続けるだろうし、企業はソフトウェア投資を通してコスト削減へ動いており、今後景気が低迷したとしても平均以上の成長率が期待できる。またFANGなどの大手は力を持ち過ぎて今後規制の対象となりつつあるし、時価総額が1兆ドルもあれば成長鈍化は避けられない。
バフェットは「継続的発生する費用がコストでないならば、一体それは何なのか?」と言う。これについては何年も前から指摘されており、今更感はあるが新興企業のGAAPベースとの乖離幅は確かに異様だ。米IT大手は例外なくストックオプションが報酬として使われているが、バロンズによるとワークデイとサービスナウの株式報酬は売上高の2割にものぼるとのことだ。ここまで大きい費用を無視した決算を前提にすることは危険であり、GAAPベースも含めたチェックが必要だ。
利益が出ていない、新興企業のバリュエーション判断にはPrice/Sales(PSR)が有効だ。私は3〜5年先の予想利益をベースにしたPER(PEGレシオ)と売上高成長率を考慮することが多いが、PSRも大いに参考になると思う。企業の規模や成長率にもよるが経験的にPSRが25倍以上は危険だと思う。
ただバリュエーションの判断も大切だが、決算書だけでは分からない「競争力・参入障壁・市場規模」を見極めることがさらに重要であることは言うまでもない。私は上記の企業の中では圧倒的にAdobeとTwilloを評価している。
Sky-High Software Stocks Are Beginning to Look Like They're Forming a Bubble
個人情報流出問題が起きた後も同社の業績は順調に拡大してしている。これは個人情報にターゲットを定めたい広告主がいかに多いかの裏返しでもある。月間アクティブユーザーは24.1億人となり、前年同期比で8%増えた。インスタグラムやワッツアップも含めた総ユーザーは27億人にものぼり、本業は極めて順調に推移している。2019年12月期の予想PERは30倍程度だが、ビジネスモデルの優秀さ、2-3割近い成長を考えればFANGの中でも圧倒的に魅力的だ。リブラの行方は分からないが、私は同社の長期的な成長に対して確信がある。
Facebookは依然として有望
ソフトウェア企業の躍進
ファクトセットによるとS&P500の予想PERは17倍程度(7/26時点)と米市場全体のバリュエーションはわずかに割高な程度だ。しかも2019年4−6月期決算を発表した221社のうち170社の決算が事前予想を上回っており、好調な業績やFRBによる利下げを考慮すれば妥当な水準と言えるだろう。しかしクラウドソフトウェアは今年最もホットなセクターになっていることもあり、株価は平均で年初来40%近く上昇し、その大半が割高な水準だ。
2019年のIPO市場は近年ない程の活況ぶりで、資金調達額は2000年のドットコムバブルを超える可能性がある。その牽引役は好調なクラウドやソフトウェア企業のあまりに魅力的なリターンだ。
今年上場したZoom Video Communicationsの株価は3ヶ月で+168%のリターンを叩き出し、昨年のIPOトップパフォーマンスであるZscalerは1年3ヶ月で株価は4倍に上昇している。OKTAは上場から2年程度で株価は8倍となり、今週決算発表が予定されているShopifyの年初来のパフォーマンスは+140%と群を抜いている。ZoomとZscalerの売上高成長率は50%を超えており、OKTAやShopifyも30%を超えているが、その高い成長率こそが他のクラウドソフトウェア企業も含めて株価を正当化する唯一の理由でもある。
米中貿易摩擦が激化する中でも、製造や販売において中国への依存がないソフトウェア企業は投資がしやすかった。今後もクラウドへの移行を推し進める米企業の特需を最大限に受け続けるだろうし、企業はソフトウェア投資を通してコスト削減へ動いており、今後景気が低迷したとしても平均以上の成長率が期待できる。またFANGなどの大手は力を持ち過ぎて今後規制の対象となりつつあるし、時価総額が1兆ドルもあれば成長鈍化は避けられない。
バロンズでは株式報酬をコストに含めないNon-GAAPが評価を過大にしていると指摘。
バフェットは「継続的発生する費用がコストでないならば、一体それは何なのか?」と言う。これについては何年も前から指摘されており、今更感はあるが新興企業のGAAPベースとの乖離幅は確かに異様だ。米IT大手は例外なくストックオプションが報酬として使われているが、バロンズによるとワークデイとサービスナウの株式報酬は売上高の2割にものぼるとのことだ。ここまで大きい費用を無視した決算を前提にすることは危険であり、GAAPベースも含めたチェックが必要だ。
バロンズ「Sky-High Software Stocks Are Beginning to Look Like They’re Forming a Bubble」より引用。 |
利益が出ていない、新興企業のバリュエーション判断にはPrice/Sales(PSR)が有効だ。私は3〜5年先の予想利益をベースにしたPER(PEGレシオ)と売上高成長率を考慮することが多いが、PSRも大いに参考になると思う。企業の規模や成長率にもよるが経験的にPSRが25倍以上は危険だと思う。
ただバリュエーションの判断も大切だが、決算書だけでは分からない「競争力・参入障壁・市場規模」を見極めることがさらに重要であることは言うまでもない。私は上記の企業の中では圧倒的にAdobeとTwilloを評価している。
Sky-High Software Stocks Are Beginning to Look Like They're Forming a Bubble
フェイスブックの決算について少し
今月24日にFTC(連邦取引委員会)と過去最高額の50億ドルの制裁金で和解をしたフェイスブックだが、2019年4−6月期決算は売上高が前年同期比+28%となり、前年同期に比べて成長が加速。EPSと合わせて事前予想を上回った。個人情報流出問題が起きた後も同社の業績は順調に拡大してしている。これは個人情報にターゲットを定めたい広告主がいかに多いかの裏返しでもある。月間アクティブユーザーは24.1億人となり、前年同期比で8%増えた。インスタグラムやワッツアップも含めた総ユーザーは27億人にものぼり、本業は極めて順調に推移している。2019年12月期の予想PERは30倍程度だが、ビジネスモデルの優秀さ、2-3割近い成長を考えればFANGの中でも圧倒的に魅力的だ。リブラの行方は分からないが、私は同社の長期的な成長に対して確信がある。
Facebookは依然として有望