ウォルト・ディズニー株は今月、3年8ヶ月振りに高値を更新
ディズニー・プラスの詳細を知れば知るほど、それがいかに用意周到に準備されたものかが分かる。任期を延長をしたロバート・アレンアイガーCEOはようやく花道を飾れるだろうか。しかしその一方で「コードカッティング」の流れは、利益の大半を占めるテレビ事業を引き続き圧迫している。本日は動画配信の見通しとともにこれから待ち受ける大きな問題にも焦点を当てたい。
ディズニーは将来を見据え、着々とコンテンツを拡大してきた。
21世紀フォックスについてはコムキャストの参入によって買収額は当初予定の524億ドルから大幅に膨らんだが、それ以外は、今思えば全て最高の買い物であっただろう。特にスターウォーズやインディージョーンズなどを持つルーカスフィルムの市場価値は、今や100億ドルを有に超える。
動画プラットフォームへは次々と新たなプレーヤーが参入しており競争激化は必至だが、勝負の鍵がコンテンツ力であることは明白だ。すでに優良なコンテンツを持ち、制作や基盤を持つ同社は有利に進めることができるだろう。
価格戦略から見えるもの
ディズニー・プラスについては 2024年に黒字化の予想がされているが、その可能性は高いと思う。その頃には契約者数は6,000〜9,000万人を見込んおり、売上高は50〜75億ドル程度になる見込みだ。
むしろディズニーにとって勝負となるのは6割を出資するHuluの方だ。(先日AT&Tが保有する1割も買い取ることを表明して持ち分はさらに増えた。)いずれはディズニー・プラスとセット販売されることは確実だろうが、こちらはまだまだ未知数だ。私はHuluの黒字化はディズニー・プラスよりもはるかに難しくなると予想している。
苦戦するテレビ事業
私は長らくディズニー推しではあったが、見切った最大の要因はディズニーが8割出資するESPNの存在だ。加入者は2013年の9,900万人から2018年9月末には8,600万人となり、5年で13%減った。2019年度の第1Q決算でも、ケーブルネットワークスの営業利益は6%減少している。
またESNPが得意とするスポーツは集客力が高く魅力的なコンテンツだが、とにかく金がかかり過ぎる。ネットフリックスはスポーツ配信へ参入しないことを表明しているが、それは今のところ元が取れないことをよく知っているからだ。ネットフリックスは2017年にコンテンツに89億ドルも浪費して投資家を仰天させたが、ESPNは2017年時点でスポーツコンテンツに80億ドル(うちNFLだけで20億ドル)も支払っている。
このようにスポーツ番組の調達コストは年々増加しているにも関わらず、興味がない人は続々とコードカッティングしている。WSJによると米国の一般的な家庭は動画視聴へ月間90ドル支払っているとのことであるが、動画配信サービスの安さを考えると有料テレビからの切り替えはまだまだ進むだろう。
ただしESPNも黙ってコードを切られているわけではない。MLBの独自ストリーミング会社BAMTechへの出資を足がかりにスポーツコンテンツのストリーミング配信を行う「ESPN+」を立ち上げた。ESPN+はテレビと重複しないをコンテンツを配信するものだが、昨年2018年4月の開始以降すでに契約者は200万人を超えた。今後800〜1,200万人へ拡大見込みだが、月額4.99ドルのサービスでESPNの契約者減少をヘッジするには不十分すぎるとの見方が大勢だ。
Disny+、Hulu、ESPN+の3つのストリーミングを運営によって2019年に39億ドルの赤字、2020年には49億ドルへ拡大すると見られている。ディズニー投資家は成果を得るためには再び辛抱を強いられる可能性があるかも知れない。