2019年の米IPOは大物揃いだ。3/29のLyftを皮切りにUber、slack、Pinterest、Palantirなど大型ユニコーンの上場ラッシュが予想されている。またAirbnbも早ければ年内に上場する可能性がある。
2018年の米IPO市場は高水準を記録し、近年上場した新興企業には驚異的な成長を遂げる企業も多い。昨年上場した中では、私はクラウドベースのインターネットセキュリティプラットフォーム企業Zscalerに特に注目している。
一方でFANGなどの大手は未だ有望であることには変わりないが、力を持ちすぎて規制のターゲットとなりつつあるし、時価総額も50〜100兆円程度と巨大であり成長鈍化は避けられなくなっている。新興企業や中小型株への投資は、大型株の順張りに比べればはるかに難易度は高いが、リターンを追求する上で魅力は高い。
またIPOのトレンドと市場全体の時価総額ランキングは、米株式市場の全体像を把握するのに役立つものであるが、本日はその中でも米IPO企業に注目したい。ちなみに現在のところ世界のユニコーンで最も評価が高い3社はアント・フィナンシャル、ウーバー、バイトダンスの順である。
■米国IPO市場
2018/3/18~2019/3/17の1年間に上場した企業数は153社。2019/3/17終値時点でオファー価格を上回っている企業数は52%の80社。上場した153社の平均リターンは17.69%となっている。
【業種別上場数】
1位 ヘルスケア 66社(43.1%)
2位 ハイテク 34社(22.2%)
3位 金融 21社(13.7%)
4位 サービス 17社(11.1%)
5位 小売り 10社(6.5%)
6位 エネルギー 2社(1.3%)
7位ㄒ 素材·資本財·公益 各1社(各0.7%)
(※セクター 上場企業数 全体に占める割合)
【平均リターン】
1位 ハイテク +45.94%
2位 ヘルスケア +16%
3位 小売り +14.35%
4位 金融 +12.25%
5位 サービス -10.07%
(2019/3/17時点のオファー価格から見た平均リターン)
オファー価格を上回る企業数の比率は、ハイテクが34社中24社と70. 69%でトップ。以下小売り60%、金融52%、ヘルスケア50%、サービスが35%と続く。
上場数ではヘルスケアが最多だが、大赤字のバイオテクノロジー企業の上場が目立つ。ヘルスケアセクターは上場した66社の平均リターンが16%と堅調な一方で、18社が3割を超える下落で、さらにうち11社は50%を超える下落となっており非常にリスキーなセクターだと言える。
現在のところ低金利による恩恵を最も受けているのはバイオ企業だが、よく見るととても手を出す気にならない企業ばかりだ。今後もし金利上昇、または景気後退に陥ることがあれば真っ先に小規模なバイオ企業が消えていくだろうと思う。
■パフォーマンスランキング(2018/3/19~2019/3/18)
【1位】Guardant Health +392.11%
2018/10/4上場後、株価は既にオファー価格の5倍超え。ちなみにこの勝ち組企業もソフトバンクの投資先である。
同社は血液検査のような簡単な方法で、遺伝子情報を解析しガンを早期発見できるサービスを手掛ける。2018年10~12月期決算は主力のがん検査事業の売上高が前年同期比で倍増し、市場予想を大幅に上回った。年初来のリターンも+149%。
同社の検査は10日程度で結果が出る上、費用も従来の3分の1程度。これまでに約4万人の情報を解析しているが、5年以内に100万人を検査し、膨大なデータを収集していくことで精度を上げていく計画だ。
個人的にはバイオ業界では医薬品の開発メーカーよりも、同社やイルミナのような解析のビジネスモデルの方が好みだ。DNA解析装置の世界的大手である米イルミナは安定的に高い業績を上げている。
【2位】 Tilray +324.94%
医療用大麻を開発·販売するカナダの医薬品メーカー。
【3位】 Inspire Medical Systems +257.44%
閉塞性睡眠時無呼吸症の患者に対する低侵襲ソリューションの開発。
【4位】Smartsheet +190.93%
共同作業の管理·自動化プラットフォームである「Smartshee」を手掛けるSaas系。各種デバイスからアクセスし、ワークフローの整理・共有を可能にする。
【5位】Goosehead Insurance +176.20%
米国の個人保険会社。
【6位】 Golden Bull Ltd, +157.25%
中国のオンライン金融会社。個人および中小企業への貸付がメイン。
【7位】Elastic N.V. +136.03%
データ検索、分析を実行するオープンソースソフトウェアを提供し、Webサービスの効率的な運営管理を実現する。ライドシェアリングサービスのUberやLyftのドライバーのマッチングや、Tinderの出会い系アプリケーションでのユーザーのマッチングなど、さまざまな検索で使用されている。
【8位】HUYA Inc. + 131.92%
中国のゲーム動画配信サイト。テンセント出資
【9位】Anaplan +130.00%
経営に必要とされる計画立案およびシユミレーションなどの分析を行うクラウド型ソリューションツールを提供。同社は「コネクテッドプランニング」という戦略を提唱し、マーケティング、財務、人事などを複合的に管理した経営戦略の立案をサポート。
【10位】Avalara +127.08%
主に自動納税対応ソフトウェア企業。課税対象、税率の特定、税金の計算、納付・還付などのプロセスを自動化。
【11位】Ceridian HCM Holding +126.55%
人材管理のソフトウェア企業。同社のソフトを使うことで人事・給与計算・給付・労働管理など幅広く管理することが可能。
【番外編】Zscaler +320.5%
期間を2018/3/19~2019/3/18の1年で取ったため、2018/3/16上場の同社は上記に含まれていないが、私は相当有望な投資先と考えている。
上場前から既に評判は高かったが、パロアルトも含めてセキュリティ関連企業の未来は明るいだろう。特にセキュリティもオンプレミスからクラウドへの移行に伴い勢力図も変わりつつある。クラウドの浸透とともにセキュリティへの関心度は高まるばかりだ。
情報へのアクセスはモバイルなどの複数のデバイスから行われることが常であるが、同社のサービスを使えば、トラフィックは全てScalerインターネットアクセスを経由させることになる。それによりアクセス制御や脅威対策、データ保護といった機能を利用でき、より安全なサービスの活用が実現できる。AWS・AZUREの二枚看板への対応も盤石であり今後企業のセキュリティ分野において存在感を増すだろう。