Facebookは依然として有望

フェイスブックの株価は明らかに割安だ。幾つか問題を抱えていることは事実だが、ビジネスモデルは極めて優秀で、中長期的には高リターンをもたらす可能性が高いと予想している。


2018年10-12月期の売上高成長率は過去最低となったものの前年同期比+30%で、株価が高騰した今も予想PERは未だ22倍程度である。時価総額が5,000億ドルにのぼる大企業でありながら30%台の成長を示していることからも、同社がいかに巨大なマーケットニーズを取り込んでいるかが分かる。



Face book 売上高推移


通常、成長が止まって割安になった株をつかむのは悪手であることが多い。ただフェイスブックの場合、相次ぐ問題や将来への不透明感からディスカウントされているだけで、本業は変わらず好調を維持している。このバリュエーションは間違いなくお買い得だ。



■懸念材料について

もちろん私も市場の懸念材料については十分認識している。「個人情報の問題に起因したユーザー離れや顧客離反」、また「各国政府による規制」だ。


これは確かに容易には片付かないだろう。先月ザッカーバーグ氏はウォール・ストリート・ジャーナル誌へ「The Facts About Facebook」という記事を寄稿し、弁解に必死だ。「我々は決して個人情報を売ってはいない。」という主張で、今後は透明性を高め、選択肢を提供し、厳格な管理を約束している。


さらに昨年はセキュリティ部門の人員を3倍にし、今期もセキュリティ関連のコストを+40〜50%程度増加させるとアナウンスしている。これらは全て世間に示すためのパフォーマンスだが、いずれ難局を乗り切れるだろう。



その全てはザッカーバーグ氏の力ではなく、広告主の強い需要によって支えられていく。フェイスブックの持つ広告プラットフォームはもはや代替が効かない程に企業のマーケティング戦略の要になっているからだ。





例えば東洋経済2/9号でキリンビールの磯崎社長が「これまではテレビCMなどマス広告が中心だったが、今年からはデータに基いて個人に直接訴求するマーケティングにシフトしていく。費用対効果も高い。」と語っている。今後個人情報に焦点を当て、精度の高いマーケティングを行いたいのは企業側だ。




今のところそれを実現できるのはデジタル広告であり、アルファベットやフェイスブックがこれからも多くの顧客を増やす理由だ。しかも高額なコストがかかるテレビCMとは違い小規模な業者も参入できるメリットがある。事実フェイスブックはスキャンダルがあったにも関わらず、広告主は直近1年間で100万件増えて現在は700万件にのぼる。




eMarketerによるとデジタル広告に占めるシェアはアルファベットの31%に次いでフェイスブックは20%のシェアを持つ。この2強による支配は当面続くであろう。




「個人情報を収集して、広告を表示する。」

このビジネスモデルは今まさに大きな反感を生んでおり、今後いくつか規制が敷かれることは間違いないだろう。ただ以前にも書いたが、インターネット広告はユーザーが無料でサービスを利用でき、企業にとって有益なマーケティング機会を与える最強のビジネスモデルだ。


便利さを追求する現代社会において、物事の道理を考えればなくなるわけがないというのが私の意見だ。また規制強化はコスト増を招き、資金力のある大手の寡占化をより進めるだろう。



■Facebookの存在感

We are  socialのサイトより引用




【全てのWEBSITEを対象とした訪問者数のランキング】
Google、Youtubeに次いでFacebookは3位。Instagramは10位。



【Social  Platformsのアクティブユーザー数】
1位Facebook、2位Youtube、3位WhatsApp、4位FBメッセンジャー、5位Wechat、6位Instagram。フェイスブックが傘下企業含めて上位を独占している。



SNS(Social Networking Service)においてフェイスブックの存在感は抜群だ。最近急成長しているInstagramの詳細は明らかにされていないが、今期の売上高は140億ドルにものぼると予想されている。時価総額は1,000億ドルとも言われ、その価値は7年弱で買収額の7.15億ドルから140倍近くに膨れ上がっている。






■ブームの終焉は?

SNSはここ数年でInstagramやSnapchat、TikTokなど新しいサービスが次々と生まれている。mixiを見ている我々日本人からすると、フェイスブックのサービスがいつか時代遅れになり、廃れてしまうのではないかという懸念を持っても当然だ。



これは最も予想が困難であり、最大のリスクとして認識している。ただ前提として言えるのは、形を変えようがインターネット上で人が繋がり合うSNSは存在し続けることだ。


SNSが存在し続ける限り、フェイスブックは世界規模で高いシェアを築いている先駆者のメリットを享受し続けるだろう。またインスタグラムもワッツアップも同社の傘下となったように、買収を中心とした新たなサービス拡大にも有利な立場にある。



さらにGoogle+やSnapchatの結末を見れば、いかにフェイスブックが強敵かが分かる。スナップ社はフェイスブックからの買収を拒否して、単独での存在を目指した。一時は最大のライバルと目されていたが、結局のところ勝ち目はなかった。同社の運命は買収されるか、真似されて落ちるかのいずれしかなったことが判明したのだ。


今後独占禁止法に抵触する可能性はあるが、新たなサービスを提供する企業はまずフェイスブックのターゲットになる。くどいようだが個人情報の管理が厳しくなるにつれて、資金力がある大手に有利に働く市場構造が生まれるだろう。


また台頭する中国勢も、5GにおけるHuaweiの扱いを見れば、テンセントやバイトダンスが世界的なSNSは広げることは非常に困難な話であることが分かる。ザッカーバーグ氏も認めているが、最大のライバルはYouTubeだろう。



■アジア市場における成長性


今後の有望な投資先の条件の1つとして「アジア市場の成長を取り込めるかどうか」は重要なファクターだ。IMFは2019年から2020年にかけて世界の成長率を3%台で予想しているが、アジアはゆうに5%を超える。さらに2030年にはアジアのGDPは世界の4割を占めると予想されている。


私は目先の経済トレンドや株価の予想は困難だと思っているし、ほとんど関心もない。しかし5年10年先を見据えた時に、「アジアで高いシェアを持つインターネットサービス企業の株価が今より下がってるわけがない。」というは確信は持っている。



Q4 2018 Earningsからフェイスブックの足元の状況を把握したい。




月間のアクティブユーザー23億人のうちアジアは既に9.5億人だ。米国(カナダ含む)2.4億人、欧州3.8億人を遥かに凌駕し、全体の4割を占めている。1年前に比べて14%、2年間で40%増加している。



2018年10-12月期 地域別の売上高


地域別の売上高構成は以下の通りだ。(地域 売上高 割合 前年比)
US&Canada  84.33億ドル(50%) 前年比+31,9%
Europe 41.51億ドル(25%) 前年比+27.7%
Asia-Pasific 27.59億ドル(16%) 前年比+34%
Rest of wordl 15,71億ドル(9%) 前年比+23,6%


米国の強さが際立っている。米国(カナダ含む)ユーザーの比率は全体の1割程度だが、売上高の50%を占め、かつ前年比31.9%と増加している。またアジア地域の売上高成長率は+34%で、ここ2年間で2倍に拡大している。



ユーザーあたりの売上高


【ユーザー1人あたりの売上高】
全体 7.37ドル(前年比+19%)
US&Canada  34.86ドル(前年比+30%)
Europe 10.98ドル(前年比+24%)
Asia-Pasific 2.96ドル(前年比+16.5%)
Rest of wordl 2.11ドル(前年比+13%)


1人あたり売上高に関しては欧米ユーザーの成長が顕著である。一方でアジアはユーザー数の伸びが全体の収益拡大に寄与しているが、1人あたりで見ると大して伸びていないことが見て取れる。今のところ米国の10分の1以下、欧州の3分の1以下しかなく、逆に言えば成長の余地が大きいと言える。


いずれにせよフェイスブックの決算を見る限り、今後の成長は揺るぎないものに見える。



■フェイスブック、ワッツアップ、インスタグラム、メッセンジャーの基盤統合について


フェイスブックは2020年までにそれぞれのサービスにおけるメッセージ機能を統合させる計画があることを公表した。


ザッカーバーグ氏によると現在27億人がフェイスブックのいずれかのサービスを利用しているとのことだ。メッセージ機能統合のメリットは、1つには利便性強化と顧客の囲い込みにあるが、もう一方でそれぞれの異なるサービス間での利用情報を取得できることによって、マネタイズの機会を拡大させる事にある。



これまで独立性を認めていたワッツアップもインスタグラムもフェイスブックの手による支配が及ぶようになり、創業者が退社したことが話題となった。ただサービス間のシナジーを高め、収集する情報を拡大し、収益化を急ぐ戦略は合理的だろう。