アルファベット 規制問題と中国進出



インターネットビジネスを収益化するのは難しい。何故なら無償サービスが基本であり、利用料を取ることが難しいからだ。ネットビジネスにおける究極のマネタイズの方法は広告事業であり、その事実は今も昔も変わらない。世界のネット広告を牛耳るアルファベットやフェイスブックの2社の将来は有望であろうが、その前にしばらく試練が続く可能性が高い。


ネットユーザーは便利なサービスの数々が、自身の個人情報を提供することで成り立つことに気が付き始めた。そればかりか多くの情報が漏洩していたことに激しい怒りを持ち始めている。最近ではフェイスブックの個人情報流出が大きく取り上げられたが、グーグルプラスも同様であったことが判明し、さらにアプリ業者がGメールを勝手にスキャンをしていたり、スマホの位置情報をオフにしていても実は全て記録していたなどの事実が明るみとなった。これらを受けて今後データ利用に関する開示は必須となり、その収集の仕方にも配慮が必要となるであろう。さらに消費者の動向を含んだビッグデータの価値は非常に高いが、その取扱コストは今後莫大となる可能性が高い。



さらにIT大手に対する脅威は個人情報の保護だけではない。独占を阻む規制が進みつつある。欧州はグーグルに対して巨額の罰金を課したが、理由はAndroidと検索エンジンのセット販売を禁止することだ。
言わずと知れたことだが、グーグルの親会社であるアルファベットの収入のうち8割以上が広告によるものだ。Androidの提供には莫大なコストがかかるが、検索エンジンを搭載するために無償で提供されている。(されていた。)この制裁はグーグルのビジネスモデルの根幹を揺さぶるものであり、同社が反抗するのは無理のないことである。ただPC時代のマイクロソフトも同様な状況に陥ったが、力を持ち過ぎたIT大手にとっては避けられない問題かもしれない。またAppleに対しても同様の制裁が降る可能性は高いであろう。

ちなみにグーグルはこれを受けてAndroidのライセンス料を導入した。



時代が変わり技術や文化がいかに進化しようが、変わらない真理がある。それは、人は良質なサービスを安価に享受したいという思いである。独占を恐れて制裁を行ったり、過度な個人情報の保護を行えば、それらは必ず我々ユーザーのコストとして跳ね返ってくる。誰がそれを望むのだろうか?情報提供を拒否したり、わざわざ広告を表示させないために有料版を選ぶ人がいかほど存在するのだろうか?



しかし確かに我々人類は市場の独占による弊害を経験してきた。一企業が独占する様相は危険をはらんでいることもまた事実かもしれない。それに対する私の答えは次の通りだ。現代の資本主義社会では必ず圧倒的な勝者が全て総取りの時代である。つまり独占が避けられない時代ということだ。ほとんどのサービスがグローバルに展開され、誰でも利用できるものになりつつある。しかしグーグルやアマゾンは巨大化して市場を独占しているが、その立場を利用して我々に無理なコストを敷いているとは思えない。それどころかどちらの企業も相当な顧客主義である。



心配しなくても、独占に甘んじて悪政を始めれば一瞬にして淘汰される時代だ。隙を見せればすぐに競争原理が働く。いずれにせよ、私は消費者にコストを転換する施策はいずれ緩和されると見ている。リーマン・ショック後に銀行に対する規制が敷かれたが、免許事業で私欲を制する法律は確かに必要である。しかし今論じている問題はそれとは全く性質が異なるものである。



それでも株価についてはしばらくは我慢が必要である。今から数時間後にアルファベットの決算が出る予定であるが、足元の決算内容はほとんど心配はないであろう。ただ見通しのところで利益率低下による波乱はあるかもしれない。かつてフェイスブックはの営業利益率が50%であったが、個人情報保護などの費用がかさみ、30%台に低下することを既に公表している。また広告事業ではアマゾンが存在感を示しつつあり、将来最大のライバルとなる可能性がある。アルファベット株の成長は確実に鈍化しており、将来有望である事実は変わらないが成果の享受には時間が必要だ。



悪い話ばかりだが、私が一番気になっているのは中国再進出の話である。同社の2018年4-6月期決算の売上高成長率は+26%であったが、それを牽引しているのはアジア地域である。WSJによると同期間のアジア太平洋地域の売上高は36%となり、全体の成長率を大きく上回る。中国における検索サービス事業は2010年に撤退しているが、中国企業が海外で販売する際に同社の広告サービスが利用されている。多くの中国企業にとってグーグルの広告は必要不可欠になりつつある。


報道によると中国再進出にはまだまだ時間がかかるとされそれは間違いないだろうが、中国市場におけるAndroidのシェアは7割を超え、難題さえクリアできればすんなり成果に結びつくだろう。ピチャイCEOは就任以来中国訪問を繰り返し理解を深めている。ただしペンス副大統領はじめ政府からの反対意見は強く、米中が争う現在では難しくまだまだ不確定要素ではあるが。



米国がもたつけば中国企業が力を持つことになるだろう。ただグーグルとフェイスブックは今後最も成長するアジア地域においても存在感は抜群であり、私は時間がかかってもこの2強の将来は明るいと思う。現在のマーケット環境は相当悲観的になっており、今はとにかく辛抱が必要で長期的な視点が必要である。優良株は正しく進んでさえいれば、大きな調整を経験しながらもゆっくりと上昇していくものだ。