テンセントの未来2

テンセントの未来 1 「企業が絶好調で、無敵に見える時こそ、実際には最大の危機が訪れている可能性が高い。」馬化騰(ポニー・マー)


テンセントの危機は図らずも訪れた。中国では2016年以降、全てのゲームに関して政府当局の承認が必要となっているが、今年の3月以降新作ゲームの審査は全て凍結しているという異様な事態が続いている。背景には世論でゲーム批判が台頭していることがある。



日本ではカプコンのモンスターハンター:ワールドが配信停止に追い込まれたことが話題となったが、テンセントにとって最も大きな問題は超人気ゲームPUBG(プレイヤーアンノウンズ バトルグラウンズ)のゲーム内課金が認められないことである。テンセントの代表的なゲームといえば「王者栄耀」だが、徐々にPUBGへユーザーが移る中、未だにドル箱である「課金」ができていない。PUBGは韓国のBluehole系列のゲームだが、テンセントが中国国内における独占権を取得している。課金は許されていないが、PUBGを完全にパクったネットイースの「荒野行動」というゲームが元気に稼働しているのは皮肉な話だ。



日本でもパズドラやモンストが流行した頃、ガンホーやミクシィの株価がとてつもない上昇を演じていたが、私はいつも冷ややかな目で見ていた。ブームが去れば終わることは明白で、持続性はなく、ゲームの当たり外れのような気まぐれのものに興味はないのである。


その点テンセントが違うのはゲームの良し悪しで左右されるのではなく、完全に中国国内のプラットフォームを抑えていることだ。世界一のゲーム市場を完全に掌握し、政府からもお墨付きを与えられている同社は、独自のソフトを展開するだけでなく、海外のソフト会社からひっきりなしに提携の誘いがくる。外国企業がいかに素晴らしいソフトを作り出しても中国ではテンセントを出し抜くことは容易ではない。それどころか、大半の海外メーカーは同社が手がけるWeGame内でゲームを配信をしてもらえないだろうかと頼むことになる。


これは単に政府による規制に守られている結果なのだが、ゲームというリスクの高い産業を行う上では重要なポイントだ。海外のゲーム会社が単独で中国に進出することは現実的に不可能である。理由は冒頭に上げた規制が一番だが、そもそも外国企業が中国企業の助けを借りず、申請が通るとは到底思えない。8月にスクウェア・エニックスがテンセントと合弁による進出をしたのはもちろんそれが理由である。それは米国勢も同じでアクティビジョン・ブリザードやエピックなどもテンセントを通じて中国国内へアクセスしている。両者ともテンセントの資本が入っており、エピックについては同社が4割を持つ子会社だ。



プラットフォーマーとして世界最大のゲーム市場である中国を独占し、持続的に稼げる仕組みを持つ。そこで得た潤沢な資金を元に、EpicやRiot、スーパーセルなどの世界的なゲーム会社を買収したり、高額賞金を売りとした注目度の高いゲーム大会を開催することで競技人口を増やしてきた。それを間接的に手助けしていた政府当局だが、ここに来てその状況は揺らいでいる。さらに追い打ちをかけるように中国のGPC(中国音数協遊戯工委)からは国内のゲーム市場の鈍化を伝える知らせが届く。2018年1-6月期のゲーム売上高は前年同期比+5%程度とここ数年で一番低くなった模様だ。中国国内のゲーム人口はすでに半分の6億人にも及ぶ。ゲームの市場規模が減少するとは思えないが、確実に鈍化はしていくであろう。
続く