米国株はS&P500とNASDAQが史上最高値を更新


強気の米株市場、急な変調に備えよ-複数の著名投資家が警鐘 

Bloomberg2020年8月21日

S&P500種株価指数が3月の安値から50%余り上昇する一方、米失業率は依然として2桁台で高止まりし、連邦政府は新型コロナウイルスの封じ込めに苦戦している。S&P500種のPER(株価収益率)は過去10年の平均が18倍だが、最近では26倍にまで上昇している。(上記より引用)

実体経済との乖離

S&P500はコロナショックの下落を全て取り戻し、過去最高値を更新。年初来のリターンは+5%を超えるが、一方でバリエーションの高さは引き続き懸念事項である。Bloombergの記事にある通り2020年度の予想PERは既に26倍とかなり過大だ。世界的に金利が失われた今、株価のバリエーションが過去平均よりも高くなるのはある意味仕方がないとは言え、多くの投資家は実態とはかけ離れた株価上昇に戸惑っているだろう。

現在の株高を支える2つのエンジンは緩和相場と2021年以降の回復のシナリオだ。特に後者に関して、マーケットは一時的な落ち込みを許容しており、現時点の株価とファンダメンタルズにおける大きな乖離は今後是正されるとの根拠に基づいている。つまり2021年〜2022年にかけて予想されている回復のシナリオが崩れれば大きな調整に見舞われる可能性がある。


8/17時点におけるS&P500の予想EPS(アナリストによるコンセンサス)

(2019年の実績は162.97ドル)

2020年の予想EPS129.88ドル(-20.3%)

2021年の予想EPS165.69ドル(+27.6%)

2022年の予想EPS186.29ドル(+12.4%)


(過去実績)

2019年の実績は162.97ドル

2018年の実績は161.93ドル

2017年の実績は131.98ドル


米国市場はかなり楽観的シナリオを予想している

アナリストによる2021年度の予想EPSは、過去最高だった2019年を上回ると予想されている。つまり来年1年間の米国主要500社の利益は、コロナ前の水準を上回り過去最高になるとの見通しであるが、これは意見がかなり別れるところだろう。ゴールドマン・サックスは2021年度は前年比30%以上の回復を見込んでおり、同社の2021年予想EPSは市場予想よりも高い170ドルだ。

仮にS&P500のEPSが2021年に170ドルまで回復するとなると、現在のS&P500の終値(8/21)3,397.16のPERは約20倍となる。割安とは一切言えないが、26倍に比べればはるかに妥当な水準だ。

私は回復のタイミングについてはそれほど強気ではないが、コロナ発のDX革命は企業の生産性を高め、今後減退した需要が回復する局面では大きな成長が期待できると考えている。ただその成長の大半は既に株価に織り込まれており、今後2−3年で得られる利益はほとんどなくなっていると感じる。


いずれにせよ即撤退という水準でもない限り、緩和相場で市場を離れるという選択肢はなく、バリエーションうまく付き合っていくしかない。一部企業の株価水準は既に常軌を逸しているが、そういったリスクとは距離を置き、投資先の選別を通して工夫していくしかない。また現在の緩和政策はあらゆる弊害を生み出すと見ている。特にゾンビ企業の延命、企業債務の拡大は懸念すべき事項だ。いつの日か低成長の温床としてその高い代償を支払うことになるかもしれないが、それはまた先の話だ。