楽天はフルフィルメントサービス強化が必須

今の時代、インターネットビジネスであることの優位性や革新性はとうに失われている。例えばネットフリックスは2007年にDVDレンタルから動画配信という目新しいサービスへ移行して業績を大きく伸ばしたが、今や誰もが同じサービスを展開している。しかし競争力の源泉がコンテンツ力になることを見越していた同社は、オリジナル作品への投資に成功し今もなおトップ企業として君臨している。ECにおいてはそれが「物流」であり、アマゾンはそこを完全に理解していた。



楽天が一定額以上で配送料を無料化にする強硬策は、致し方ない部分もあるがそれだけでは根本的な解決に至らない。出店企業が価格転嫁するだけに終われば何の意味もなく、根本的に配送料の負担を引き下げる取り組みが必要だ。すでに2,000億を物流への投資に充てることを発表しているが、継続的に莫大な負担が求められるだろう。アマゾンは物流を整えるために過去に何年も赤字を垂れ流した。



楽天やアリババのような「場所代」を取るマーケットプレイス型のECモールは在庫を抱えるリスクもなく、配送したりする手間がないため利益率も高い。しかしアマゾンやJD.comのように自社販売ビジネスの方がスケールメリットを生かしやすく、ECビジネスにおいて最も重要となる「物流」に真剣に取り組んできたことから、足元有利な状況が生まれている。



アリババは物流に進出しないと言っていたが、2013年に発言を撤回し、共同で「菜烏網絡」を設立したことで競争力を保っている。足元はその菜烏網絡へ33億ドルを追加出資して持ち株比率を63%まで引き上げるなど物流強化は明らかだ。ECサイト構築のショッピファイなどですら現在フルフィルメントサービス拡充こそが最も重要と考えている。その点で楽天は明らかに後手に回っていると言わざる得ないだろう。


E-commerce市場の注目企業Shopify

「ダイレクト・トゥ・コンシューマー」
ナイキがアマゾンから撤退したことが話題となったが、企業が自社サイトによる直販を強化することは確実だ。モールの利点は集客になるが、高い出店手数料に見合わなければ出店企業の離反リスクはますます高まる。楽天の場合、ポイントをはじめとしたエコシステムがなければとうに消えていただろう。



その点でZOZOの前澤氏は引き際が完璧だったと思う。「ZOZOARIGATO」がうまくいかなったことで、自社サイトの価値が低下していくことを理解していた証だ。私は特にアパレル系ECプラットフォームは相当厳しいと見ており、具体的には多くのブランドが数年以内にインスタグラムやピンタレストなどの画像系SNSへ特化し、自社サイトへの投資に走ると考えるからだ。これについては後日記事を書くつもりだ。