テンセントの未来4

テンセントの未来3テンセントについて書き始めて1ヶ月半たったが、その間も同社株は下落。9月から10月にかけては4年ぶりとなる自社株買いを毎営業日行うも、そのメッセージは市場へは届かず。悪いことは続くもので株式市場の混乱を受けて子会社のテンセントミュージックのIPOは延期。ゲーム関連の規制は早々に緩和されるとの予想を裏切り未だに続いており、事態の進展はない。逆に圧力を受けたテンセントはついにはゲームのプレイ時間の制限を設け、ゲーム関連のコストカットへと追い込まれた。その同社は今週決算発表を行う。



振り返れば今年テンセントが受けた規制はゲームだけではない。アリババとともに金利収入を得る機会も奪われることとなった。アリペイやWechatペイは顧客から多額の現金を預かっているが、そのうち購入代金については支払いを行うまでの間の利息を受け取ることができ、これが両社の大きな収益となっていた。しかし購入代金として顧客が支払った前払金は全て中国人民銀行への預入することが義務付けられた。またその他にも年始に始めようとした信用スコアリングのシステムは、政府の領域であるとして1日で閉鎖する事態となった。



今年中国市場を見て感じたのは、とにかくカントリーリスクが凄まじく高いということである。米国や日本とは明らかに次元が違う。私は基本的に誰が大統領になろうが、政治がどうなろうが体制は変わらないという考えを持ってきたが、今年は多少考え方を改める必要があると感じた。実際、米中貿易摩擦により業績堅調だった大企業が瀕死の状態へ追いやられた例もあったからだ。



その中国へあえて接近する必要性があるのかどうかは正直分からない。ただ客観的に見れば、中国は今や新興国のGDPの約半分を占めており無視できない存在であり、少なくとも今後日本株よりも高いリターンを生むことは間違いないであろう。また望まぬとも我々は間接的にインデックス投資を通して中国へアクセスする機会は増えていく。世界的な株式指数を提供するMSCIおよびFTSEはグローバル指数における中国A株の比率を引き上げることを発表したからだ。





テンセントの見通しについて話を戻そう。もし個別に中国への投資を考えるのであれば、やはりテンセントは魅力的だ。もちろん足元は今週の決算を含めて厳しく、より長期的な忍耐が伴うことになるのだが・・。特に10億人を超えるアカウントを持つWechatの潜在能力はまだまだ発揮されておらず、収益拡大の余地は大きい。WSJによると2018年4-6月期の同社の広告収入はユーザー1人あたり2ドルと北米の25ドルの10分の1以下だ。私は今後10年間で3倍以上に拡大する余地があると思う。



また中国のe-sports観戦者は1億3,500万人にものぼり世界の3分の1を占める。今年5月に開かれたLeague of Legends(TENCENT傘下のRiot Gamesの代表的なゲーム)の世界大会におけるオンライン観戦者は、ピーク時でなんと1億2,760万人(世界全体)である。これは世界で最も人気スポーツであるスーパーボウルの2018年の観戦者1億340万人をしのぐ数字だ。同じくテンセント傘下のEpic Gamesの人気ゲームであるFortniteは1シーズンの賞金総額を1億ドルに引き上げることを発表している。日本でもe-sportsの注目度は上がっているが、米中の規模には遠く及ばない。



中国のマーケットの大きさにはほとほと驚かされるが、それに相当な価値がある。企業がすごいというより、中国の規模がすごいというのが事実であり、これは日本にはなく羨ましい限りだ。それに今後はアジアの莫大な市場が待ち受ける。私は少なくともゲームにおいてはテンセントが強いと見ており、市場を掌握する可能性は高いと感じている。



中国については賛否両論あり、特に現状は成長鈍化が鮮明でかつ不透明感が強い。それでも投資はやはり長期戦である。私は中国の2強、テンセントとアリババの今後に注目している。それとe-sportsとアジア市場の覇権争いは今後非常に重要なテーマであると感じているため、折をみて記事にしていくつもりである。