前回、世にある大半のアクティブ・ファンドが市場平均を超えられない悲しい現実について紹介した。しかしその一方で、数は少ないのだが、長期間にわたりインデックスをアウトパフォームし続けているファンドは確かに存在する。本日はそれらのファンドにスポットライトを当て運用手法を検証することで、ポートフォリオ構築のヒントにしたい。
米国大型株を対象した6ファンド
①Fidelity® Contrafund
運用資産1,200億ドル、設定日1967/5/17
②T. Rowe Price Blue Chip Growth
運用資産698億ドル、設定日1993/6/30
③Vanguard PRIMECAP Fund
運用資産691億ドル、設定日1984/11/1
④T. Rowe Price Growth Stock Fund
運用資産575億ドル、設定日1950/4/11
⑤Fidelity® Growth Company
運用資産441億ドル、設定日1983/1/17
⑥Harbor Capital Appreciation Fund
運用資産314億ドル、設定日1987/12/29
過去のパフォーマンス
基準日:2020/1/24、リターンは年率換算 |
・上記の6ファンドはいずれも過去3年・5年・10年・15年リターンにおいてベンチマークのS&P500を上回っている。
・単年で高いリターンを出すファンドは数多いが、長期間インデックスをアウトパフォームし続けるファンドは極めて稀であり、実力の証だ。
ポートフォリオ
銘柄数・上位10銘柄が占める割合、入替率 ※フィデリティの2本は2019/11/30、残りは全て2019/9/30時点 |
・6ファンドの平均銘柄数は186程度だが、100以下の集中投資タイプから400以上のものまで幅広い。
・トップ10銘柄が占める割合はいずれも高く平均で40%以上。(S&P500の上位10銘柄の割合は23%程度。)
・銘柄の入替率(Turnover)は結構高く、何もせずに放置するスタンスではない。
組み入れ株式の時価総額
Giant Cap2,000億ドル〜、Large Cap100億ドル〜、Mid Cap20億ドル〜、Small &Micro〜20億ドル未満 ※フィデリティの2本は2019/11/30、残りは全て2019/9/30時点 |
・時価総額2,000億ドル以上の大型株が平均で60%以上を占め、100億ドル以上と合わせて全体の90%を占める。
・組み入れ銘柄の平均時価総額は1,276億程度。
組み入れ上位セクター
セクター別保有率とS&P500との比較 ※S&P500は2019/12/30、フィデリティの2本は2019/11/30、残りは全て2019/9/30時点。 |
・全てのファンドにおいてITが最大のウェイトを占めているが、平均は33.7%とS&P500よりも10%以上高い。
・特徴的なのは「Consumer Discretionary」一般消費財の組み入れが多く、ITに続くウェイトを占めていること。S&P500ではITの次にヘルスケア、コミュニケーションサービスのウェイトが高い。
・ベンチマークのS&P500と比較してウェイトが高いセクターはIT、一般消費財、コミュニケーションサービス、ヘルスケアの4つのみで、残りは全て低い。
組み入れ下位セクター
セクター別保有率とS&P500との比較 ※S&P500は2019/12/30、フィデリティの2本は2019/11/30、残りは全て2019/9/30時点。 |
・S&P500と比較すると、金融株のウェイトが極端に低いことが特徴。
国別ポートフォリオ
※フィデリティの2本は2019/11/30、残りは全て2019/9/30時点 |
・米国比率が89%。中国の組み入れはだいたいアリババ。
6ファンドの組み入れTOP10に登場する回数
6本全て
Microsoft
Alphabet(クラスA、Cを含む)
6本中5本
Amazon.com
6本中4本
Facebook
Visa
Mastercard
6本中3本
Sales Force
Adobe
Alibaba Group
6本中2本
Apple
Boeing
※フィデリティの2本は2019/11/30、残りは全て2019/9/30時点
どのファンドも上位銘柄の顔ぶれはだいたい似通っていて、実はS&P500ともさして変わらない。
まとめ
T. Rowe Priceの「Growth Stock Fund」、Harbor Capital の「Appreciation Fund」は銘柄数はそれぞれ80、60と少ない集中投資タイプだ。そのリスクを低減するために銘柄の入替率(Turnover)が高めになっていると推測される。本日紹介したファンド以外にも高パフォーマンスを出すファンドには集中投資タイプが多いのだが、それによってボラティリティが出しやすくなるが、やはりリスクは高くなる。
またフィデリティの「 Contrafund」は302社、「 Growth Company」は404社と銘柄数が多いファンドもあるが、いずれも上位10社がポートフォリオの40%を占めている。一部の企業に集中投資する構図は同じだが、分散を組み合わせてリスクを低減している。
またバークシャー・ハサウェイに代表されるように、いくら目利きのファンドでも近年は情報技術セクターのウェイトが低いファンドはS&P500に勝てていない。過去数年は成長性の高いIT企業にどれだけ組み入れたかが結果を左右しており、明らかにグロース有利の展開だった。
今回紹介したファンドは長年に渡り高いリターンを残してきたことからも、定期的に開示されるレポートには注目する価値がある。また機会があればその後のリターンを追ってみたいと思う。