トゥイリオ


トゥイリオ(TWLO)は通信プラットフォームを手掛けるAPI。米国には魅力的なハイテク企業が複数あるが私は同社に一際注目しており、投資先としても有望視している。


CEOのJeff Lawsonは元AWS(Amazon Web Services)の技術者であり、彼の言葉を借りて説明すると、TwilioはAWSの概念をコミュニケーション分野へ持ち込んだ会社だ。AWSがハードウェアの機能をクラウド化したように、ハードに依存する通信業界にソフトウェア主体の流れを作り出そうとしている。


日本でもSaaSはよく聞くようになったが、数年以内にCPaaS(Communications Platform as a Service)を頻繁に耳にすることになるだろう。CPaaSとは簡単に言えばコミュニケーションのためのクラウドサービスだ。


これから述べるが、CPaaSには利便性とコストの両面から優位性があり、爆発的に伸びることに疑いの余地はない。SaaS同様のスピードで浸透していくだろうが、そのCPaaS業界のリーダーがトゥイリオである。


Jeff Lawson


馴染みのない人には分かりづらい会社だと思うので、順に説明していく。


Twilioのサービスを使うと、インターネット環境さえあれば電話設備を一切持つことなく世界100カ国以上で電話番号を取得し、電話を架けたり受けたりすることができる。大規模な人員を抱える企業が電話設備を揃えるとなるとかなりの初期コストがかかるが、それが不要となる。



さらに今年はコンタクトセンター機能を提供するFlexを発表した。




コンタクトセンターの市場規模は大きい。しかも従来のコンタクトセンターはつながらない、たらい回し、時間外といった顧客の不満を多く抱える上に、高コストで運営されており、近い将来確実に一掃されるだろう。

特に莫大な初期コストがネックで、仕様を変更するにもハードの改良が必須なところが致命的だ。



Twilio  Flexは決められたパッケージ型商品ではなく、クラウド上にコンタクトセンターを構築し、導入企業は独自にカスタマイズが可能だ。しかも初期コストなく、気軽に導入できる。キャンペーンなどの短期間でも低コストで運営ができ、かつ数万人規模の対応が可能だ。


また最近発表された会話形AIプラットフォームの「Twilio Autopilot」は、顧客対応を自動化する取り組みの1つで、自然言語の理解と機会学習により経験を積むことができる。つまり顧客の問い合わせに対する返答の範囲、回答のレベルを日増しに引き上げることができる。またどうしても人の手が必要な時は、それまでのやり取りを引き継いだ上で対応が可能だ。


Twilio Autopilotにとって積み上げられたプログラムは、1コードも追加することなく、Flexだけではなく、SMSやチャットの他、アマゾンのAlexa、Google Assistantのスキルなどあらゆるデバイスへも組み込みが可能だ。人がAIとコミュニケーションする割合は現在5%未満と言われるが、2021年までに15%程度まで拡大すると言われている。





既にLyftやshopity、Netflixなどの多くの企業はトゥイリオのサービスに依存している。近い将来、人員を配置した大規模なコールセンターは消え、クラウド上に低コストかつ自動化したコンタクトセンターを構築するのが主流となるだろうが、この分野でTwilioはファーストチョイスとなっている。顧客数は2017年9月末時点の46,489から2018年9月末には61,153へ拡大し、Flexを投入した今期の業績は極めて堅調だ。顧客はTwitter、Facebook、Airbnbなどの大手から中小企業まで幅広い。






2018年第3Q決算は売上高が前年同期比+68%の1億6890万ドル。第2Qからも+14%と驚異的に成長している。しかしクラウドベースのコンタクトセンターは昨年末時点で10%程度しか進んでおらず余地はまだまだ大きい。








トゥイリオのビジネスモデルで最も優秀なところは、自社ブランドで決められた仕組みを押し付けるものではなく、あくまでプラットフォームとして柔軟性に富んでいることだ。


開発者向けにはTwilio Channelsというプラットフォームを提供している。現在コミュニケーションの手段は電話・アプリ・電子メール・動画など多様化しており、開発者にはそれぞれの仕様に合せたコードが必要だ。例えばメッセンジャーアプリ1つとっても、WhatsApp、Facebookメッセンジャー、LINE、Wechatなど全く異なる仕様が必要だが、Twilio Channelsを使うことで1つのコードで全てが対応可能となる。さらに今後企業がAlexaに対応したサービスを展開する上で、同社のサービスを幅広く利用することになるだろう。


さらに目を引くのはサードパーティとの連携だ。


例えば多くの企業ではSalesforceやzendeskなどの顧客管理ソフトを使うことが増えたが、Twilioはこれらのサードパーティと連携し、コミュニケーションと顧客管理ソフトと統合することを実現している。CRMツールとの連携は、営業上の利便性は極めて高い上に、今後Autopilotの機能も拡張させやすい。

さらに顧客との電話のやり取りをテキスト化して記録する仕組みが導入できれば、相当なニーズがあるであろう。


ライバル関係について


類似企業として一番近いライバルはBandwidth(BAND)だろうが、将来的な競争相手はアマゾン、グーグル、マイクロソフトら大手になる可能性がある。

そのうちクラウドコンタクトセンターとしてはAmazon Connectが最も脅威だ。ただ今のところ高度なコンタクトセンターを構築するにはTwilio Flexの優位性が圧倒的に高い。理由はCRMソフトとの連携、カスタマイズの余地、通話機能以外(SMS、メールなど)への対応力には大きな差があるからだ。

今後より競争は激しくなるが、私はうまく行けばオラクルやSAPら大手を寄せ付けずに独走するセールスフォースのように大躍進する可能性も十分あると思っている。


いずれにせよ同社がコミュニケーションを「より便利に」、「より低コストに」することを実現し、利益を上げ始めていることは確かだ。特にコールセンター事業は今まさに大きな転換期を迎えており、同社は極めて重要なポジションを形成しつつあることも間違いない。


現在の株価はそれなりのバリュエーションがついており、かつ市場環境も悪い。ただある程度リスクが取れて、かつ数年スパンで投資を考えられる人なら一考する余地がある投資先だと思う。