グロース投資

過去30年においてS&P500の平均PERは16倍程度


これは長い歴史において、企業の価値というものが利益の16倍の水準に収斂することを示している。しかし我々が追いかける成長株は、おおよそこれとはかけ離れたものだ。現在のマーケット環境では成長企業のバリエーションが16倍以下になるわけがなく、場合によってはその10倍以上で取引されていることも多い。それが妥当であるか否かは後になってみないと分からないが、とてもリスクの高いものであることは間違いないだろう。





現在米国の第3Q決算が続いているが、高PER株の失敗事例はまさに恐怖だ。決算が予想を下回ったTwitterは急落し、わずか1日で20%近く下落した。今年上場して注目を浴びたビヨンド・ミートも本日は決算発表を受けて20%近い下落。同じくフードデリバリーのグラブハブはなんと38%近い急落でスタートしている。



これらの中には、常識的に考えて明らかに避けられるものが複数あるのだが、楽観的なマーケットは判断を狂わせることも多い。ただ長期的に有望な企業でも、やはり過大なバリエーションで投資すると痛い目に会うものだ。



S&P500やDowの水準は妥当だが、成長企業のバリエーションはかなり高め


金利低下により株式市場のバリエーションは徐々に高まっているが、メジャーな株式指数に過熱感はない。その代わり資金の行き場はソフトウェア企業やヘルスケア企業などの高成長株やジャンク債などのリスク資産だ。


私は特にソフトウェア企業の将来性を確信しているが、株価水準は総じて割高であり投資妙味は極めて少ないと感じている。エビデンスを出そうと思ったが、そもそもSaaSは赤字企業が多いためセクターを一纏めにしたPERなどは意味が無いので、この辺のデータは過去記事を参照


ソフトウェア企業の躍進

PER100倍の妥当性


もしEPS成長率が年率50%を超える企業ならば、3年後の予想PERは44倍、5年後は約20倍と低下する。高い成長率はグロース投資の本質であり、割高な株価を正当化する唯一の方法だ。


ただ高PER企業の株価は市場の気まぐれで20-30%ぐらいは平気で振れてもおかしくないことは理解しておくべきで、20%未満は誤差と言ってもいいだろう。企業業績が堅調であっても市場の金利や景況感次第で大きく変わる。それこそ失望的な決算であったり、リセッション時には株価が半値、3分の1もあり得るものだ。



「潮が引いた時、初めて誰が裸で泳いでいたかわかる」というのはウォーレン・バフェットの名言であるが、グロース投資家にとっては常に戒めるべき言葉だ。少なくとも投資にあたっては本当に高いバリエーションに見合うのかどうか、マーケットが下落しても付き合えるかどうかを冷静に考える必要があるだろう。そうでないと途中で耐えられなくなるのは目に見えている。その点で私はビヨンド・ミートのような製造業や配車・デリバリーサービスなどはとても付き合える気がしないが。